長崎創価学会 崎戸海岸

昨年、長崎で開催された第6回核兵器廃絶地球市民集会ナガサキ(朝長万左男実行委員長)で採択された“長崎アピール”に対し、核兵器保有国の駐日大使館から回答の文書が同委員会に届きました。文書には、同国のこれまでの立場を堅持しつつも、「完全に支持はできないが、目標は共有している」との趣旨でした。しかしなぜ、目標を共有しているにも関わらず、核保有国の軍縮は進まないのでしょうか?そこには相容れない2つの考えがあります。

1つは、非保有国が訴える“人道上の観点からの核軍縮”です。核兵器があるからこそ、人類は常に核兵器の脅威に曝され続けています。更に核兵器の使用がもたらす被害は、受け入れがく耐え難い非人道的苦痛を伴います。
もう1つは、保有国や依存国が訴える“核兵器による戦略的安定”です。他国が核兵器(脅威となる兵器)を保有する以上、自国も核兵器を保有し国民や同盟国を守り安全保障上の均衡を保つ、とするものです。しかし、相互不信に基づくこの考えには、他国よりも優位に立ちたいとする思惑から際限がありません。

この課題に対し人類は、挑戦をした歴史があります。それが東西冷戦下で開催された1986年の米ソ・レイキャビック首脳会談です。この会談は核廃絶合意の一歩手前で破談となりますが、その後も米・レーガン大統領とソ連・ゴルバチョフ書記長は、相互不信を信頼へ転換すべく対話を継続。1988年の中距離核戦力全廃条約(INF)発行へと結実します。この条約により米ソは2,700発の中距離(射程500~5,500キロ)核戦力を廃棄。「核戦争に勝者はない」という認識を共有した両首脳だからこそできた合意でした。

しかし昨年、米・トランプ大統領は、「ロシアの巡航ミサイルや弾道ミサイルの一部が条約に違反している」としてINF脱退を表明。これに対しロシア側もアメリカのように振る舞う、として条約の破棄を表明しています。(NHK時論公論「『INF条約破棄』は何をもたらすのか」より)

背景には、INF条約の制約を受けていない中国の中距離弾道ミサイル開発・配備や核武装をしたとされる北朝鮮。情勢が不安定化しているインド、パキスタン。対立するイスラエルとパレスチナの存在があります。トランプ大統領は「多国間条約」に言及していますが、核軍縮に進むのかは依然不透明なままです。

池田名誉会長は、「SGIの日」記念提言で現在の国際情勢を踏まえ対話の重要性を指摘。 “唯一の戦争被爆国である日本が核兵器禁止条約への参加に向けた課題の克服に努めるとともに、すべての国に開かれた対話の場の確保に尽力すべき”、としています。

さらに、核兵器禁止条約に参加していない国を含めた8割近くの国々が、条約の禁止事項に沿った安全保障政策を推進し実施している点に注目。禁止条約の中核的な規範を既に多くの国が受け入れているとして、「核兵器に依存しない安全保障」への道に期待を寄せています。

新たな時代を迎え、私たちも新しい発想で「核兵器のない世界」という“平和へのビジョン”を、志を同じくする青年と共有し、不信を信頼へと変えゆく地道な対話を通し、長崎から世界に平和へのメッセージを発信してまいりたいと思います。
(弘)